とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

読書-国産小説

『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) 作者: 宮澤伊織,shirakaba 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/02/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (9件) を見る 作者は非常に頭の良い人なのだろうなと感じる。web上に流布するオ…

『蜜蜂と遠雷』

蜜蜂と遠雷 作者: 恩田陸 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2016/09/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (61件) を見る 音楽を体験する「感動」と、音楽を体現する「天才」を、言葉の力で描き切った、圧巻の超大作。この世界からは、醜いものは可能な…

『最良の嘘の最後のひと言』

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫) 作者: 河野裕 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2017/02/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 限定された空間と、制限されたルール内で、超能力者たちがお互い策略を駆使し騙し合いに臨むコンゲ…

デビュー作とは思えない巧みな構成と表現力 澤村伊智『ぼぎわんが、来る』

ぼぎわんが、来る 作者: 澤村伊智 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 2015年の日本ホラー小説大賞受賞作。「ぼぎわん」と称される怪異の正体が、三人の視点を通じて明らかになって…

世界に誇りうる極上の国産ミステリ 横山秀夫『64(ロクヨン) 下』

64(ロクヨン) 下 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (19件) を見る 同時並行で起こる様々な事件を複数の視点で展開する、というタイプの小説は諸作ある。だがこの作品では、すべ…

先の見通しがつかぬ焦りと快感 横山秀夫『64(ロクヨン) 上』

64(ロクヨン) 上 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (28件) を見る たぶん『クライマーズ・ハイ』以来の横山秀夫読み。今年映画化もされた話題作であるが、評判に違わぬさすがの…

少年時代に読めばワクワクできたこと間違いなし 江戸川乱歩『幽霊塔』

幽霊塔 作者: 江戸川乱歩,宮崎駿 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/06/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (12件) を見る 乱歩作品の読みこぼしの中でもメジャー級の大作を、宮崎駿の表紙に魅かれてこのバージョンで。うーん、これは少年時代…

探偵小説界の巨人の技量と足跡を味わい尽くせる短編集 『江戸川乱歩名作選』

江戸川乱歩名作選 (新潮文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/06/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 乱歩存命中に刊行された文庫本としては唯一、今なお版を重ねるロングセラーとして、さらに乱歩への入門書としても名…

ホラーとしてはいまひとつだが、なかなか読ませてくれました 名梁和泉『二階の王』

二階の王 作者: 名梁和泉 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 兄の引きこもりに悩む妹視点と、社会が「悪果」と呼ばれる存在に浸食されていることに気づき、抗おうとする異能者たちの視点…

先に秘める可能性も含めて、2巻の刊行に期待! ハーーナ殿下『マタギの孫をなめんなよ!~魔獣を狩る者たち~1』

マタギの孫をなめんなよ! ~魔獣を狩る者たち~ 1 (アース・スターノベル) 作者: ハーーナ殿下,よー清水 出版社/メーカー: 泰文堂 発売日: 2015/12/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 大雑把に紹介すると、現代日本から異世界に…

無味乾燥なイメージの果てに待つもの 三沢陽一『致死量未満の殺人』

致死量未満の殺人 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 三沢陽一 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/09/17 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 第3回アガサ・クリスティー賞受賞作。閉ざされた雪の山荘で15年前に起きた毒殺事件の時効直前、男が己の罪を関…

「青春」を描くことの難しさ 友桐夏『星を撃ち落とす』

星を撃ち落とす (創元推理文庫) 作者: 友桐夏 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/09/19 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る オビにある「多感な少女たちの心を描く青春ミステリ」という言葉に魅かれて読んだが、予想していたものとはかなり…

島田ミステリ最新作、ではなく、ホームズ物語の破格のパロディです。あくまでも。 島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ』

新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険 作者: 島田荘司 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 作者の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を読んでいる人なら、「ホームズ物語」とい…

趣向を凝らした名編4編収録 横山秀夫『動機』

動機 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2002/11 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 39回 この商品を含むブログ (140件) を見る 警察手帳を一括管理するシステムが裏目に出て、一挙に30冊も紛失するという事態が発生した表題作…

フィクションの偉大なる力 横山秀夫『出口のない海』

出口のない海 (講談社文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/07/12 メディア: 文庫 クリック: 18回 この商品を含むブログ (105件) を見る なぜ神風特攻隊ではなく、「回天」なのか、それが主人公である並木の置かれた状況とタイトルに…

少しだけ感じる物足りなさ 横山秀夫『陰の季節』

陰の季節 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2001/10 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 133回 この商品を含むブログ (125件) を見る D県警を舞台とした4つの短編が収録された警察小説。解説でも指摘されていることだが、警察…

恐ろしい気迫と冷えた情熱 横山秀夫『第三の時効』

第三の時効 (集英社文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/03/17 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 108回 この商品を含むブログ (174件) を見る 再読。やはりこれは傑作。F県警捜査一課強行犯係の刑事たちの葛藤と、事件解決へ向け…

「上手い」作品だとは思うけど 桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は打ちぬけない』

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫) 作者: 桜庭一樹,むー 出版社/メーカー: 富士見書房 発売日: 2004/11 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 847回 この商品を含むブログ (510件) を見る 初・桜庭一樹読み。ライトノベルはジャンルではな…

作者の確かな技量を偲ばせる佳作 陳舜臣『影は崩れた』

影は崩れた (1966年) (新本格推理小説全集 松本清張責任監修・解説〈2〉) 作者: 陳舜臣 出版社/メーカー: 読売新聞社 発売日: 1966 メディア: ? この商品を含むブログを見る 陳舜臣さん追悼読書。海外勤務から三年ぶりに日本に帰国した商社員の深尾は、その…

続く、つながっていく「関係」 今野緒雪『マリア様がみてる 薔薇の花かんむり』

マリア様がみてる 薔薇の花かんむり (コバルト文庫 こ 7-55) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2007/10/02 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 40回 この商品を含むブログ (216件) を見る ついに祐巳と瞳子は姉妹の契りを結ぶ。…

いや、これはすごい短編集だった 今野緒雪『マリアさまがみてる フレームオブマインド』

マリア様がみてる フレームオブマインド (コバルト文庫) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2007/06 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 14回 この商品を含むブログ (182件) を見る 前巻から時間軸を遡って、写真をテーマにした10…

「秘密」の受け止め方 今野緒雪『マリアさまがみてる あなたを探しに』

マリア様がみてる−あなたを探しに (コバルト文庫) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2007/03/30 メディア: 文庫 クリック: 64回 この商品を含むブログ (244件) を見る 前巻ラスト、瞳子から祐巳への逆プロポーズ(?)の場面から…

とうとう動いた!! 今野緒雪『マリア様がみてる クリスクロス』

マリア様がみてる―クリスクロス (コバルト文庫) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/12/22 メディア: 文庫 クリック: 17回 この商品を含むブログ (241件) を見る 完全ネタバレ感想です。いよいよバレンタインデー。リリアン女…

祥子のひと言が読者の胸にも重く響く 今野緒雪『マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵』

マリア様がみてる―大きな扉 小さな鍵 (コバルト文庫) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/10/03 メディア: 文庫 クリック: 18回 この商品を含むブログ (261件) を見る 前作を超える内容の濃さ! 祐巳視点が一切無いことが効果…

改めて読むと粗さが目立つが…… 赤川次郎『毒 POISON』

毒 POISON (集英社文庫) 作者: 赤川次郎 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/05/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 約20年ぶりにkindleにて再読。1981年刊行。飲んだ後正確に24時間後に死亡し、しかも現在の化学では絶対に検出できない未…

いや「ホラー文庫」は売り方が間違ってるわ 赤川次郎『失われた少女』

失われた少女 角川ホラー文庫 作者: 赤川次郎 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 約20年ぶりにkindleにて再読。1988年に角川文庫にて刊行されたもの(初読はこちら)が後に角川ホラー…

赤川次郎の「上手さ」が分かる作品集 赤川次郎『冬の旅人』

冬の旅人 (角川文庫) 作者: 赤川次郎 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2012/10/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 約20年ぶりにkindleにて再読。1986年刊行の本書は、世界的バリトン歌手ディートリヒ・F=Dを探偵役にした同題…

加速度を増してきた物語の熱量 今野緒雪『マリア様がみてる 仮面のアクトレス』

マリア様がみてる (仮面のアクトレス) (コバルト文庫 (こ7-49)) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/06/30 メディア: 文庫 クリック: 9回 この商品を含むブログ (288件) を見る いろいろな意味でシリーズ中でも屈指の内容の濃…

これぞ作者の真骨頂! 若竹七海『さよならの手口』

さよならの手口 (文春文庫) 作者: 若竹七海 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/11/07 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 『悪いうさぎ』以来13年ぶりの葉村晶シリーズ最新刊! いやはや、堪能いたしました。若竹七海という作家の個性…

世界の対比が秀逸 今野緒雪『マリア様がみてる くもりガラスの向こう側』

マリア様がみてる―くもりガラスの向こう側 (コバルト文庫) 作者: 今野緒雪,ひびき玲音 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2006/03/31 メディア: 文庫 クリック: 10回 この商品を含むブログ (247件) を見る 前巻の衝撃的結末から引き続きの場面で始まる。祐巳…